
搾油施設の8月中の完成をめざし、9月の第1週は豆腐屋を休業し、初めから終わりまで油搾りをやってみる予定でした。結論から言いますと、臨時休業の告知が終わった直後に重大問題が発生し、搾ってみることはできませんでした。まずは8月完成を急いだ作業の報告から。
和紙筒の製作(自力作業) 8/11(月)~8/19(火)
前回の活動報告でお知らせしたとおり、油をろ過する和紙筒の作り方を平出さんから習ったので、和紙を必要分買い求めて製作。
①まずは米のりの自作。ネットで調べて、白玉粉を使って簡単にできた。白玉粉:水 = 1:4 の比率で鍋に入れて加熱。あっという間に粘りが出て完成。
②次は和紙をカット。ハサミよりも包丁の方が切りやすいことがわかった。
③米糊を使って、表(和紙のつるつるしている方)を内側にして筒状に貼り付ける。
④洗濯物干しにつるして数日乾燥。
⑤接着漏れがないか検査しながら、端をタコ糸で縛る。44本製作。
⑥舟に和紙筒を取り付ける(たまたま来た電気屋さんが見学)
コック付きホースを取り付け(自力作業) 8/12(火)
平出さんは高いところに設置したタンクに油を送り、そこからジョウロに油を受けて和紙筒に注入していたが、直接注入できるようにコックをつけたホースを取り付けた。

充填用台の製作(自力作業) 8/18(月)~8/19(火)
8/18(月)、少量の油を搾った場合用に、容器に充填するための台を豆腐屋で製作。

現場に設置してみた。和紙で濾した油を一斗缶に移し、コックを開いてビンなどに充填する。

一斗缶ののった充填用台のすぐ後ろの大きな桶に和紙でろ過した油が溜まる。そこから充填用一斗缶に移す。さらに後方の壁際に見える大きな銀色のタンクが、平出さんが使用していた充填用タンク。量が多いときはそちらを使用するつもり。
機器の動作確認 8/19(火)
8/15(金)、電気屋さんによって、各機器への電気の配線工事が完了。ついに電気がつながったので8/19(火)、実際に動かして動作確認してみた。(すべて動画を撮影したつもりが、一部できてなかった。)
- 焙煎機の回転羽根 ちゃんと回転。
- フルイにかけたナタネを圧偏機に送る昇降機 無事動くことを確認。もともと平出油屋では、菜種粕を二j粉砕機に送るもものとして使われていたものなので、中に菜種粕が沢山詰まっていて、動くが何も出てこない。その大掃除が大変だった。
- 圧偏機 オーバーホール(分解清掃)して、ちゃんと動くか心配だったがOK。
- 油圧ユニット 玉締め機との配管も終わり、作動油として古い菜種油を注入。スイッチを入れると玉締め機の台がちゃんと上昇。感動の瞬間だったが動画なし。
- 菜種粕の一次粉砕機 OK。
- 小型昇降機 一次粉砕機で大まかに砕いた菜種粕を二次粉砕機に送るもの。OK。
- 菜種粕の二次粉砕機 OK。
搾り桶の組み立て(自力作業) 8/20(水)~8/22(金)
8/20(水)、ナタネを詰める搾り桶の組み立てを試してみる。予備も含めて全部で5セット。移動の際、外側の鉄の輪には番号が振ったテープを貼ってもらってあったが、はがれ落ちたものもある。それぞれ3段の輪を積み上げ、何とか5セット組み立て。
8/22(金)、桶の内側にグルリと配置する鉄の棒がぴったりと収まらない。どれも鉄製なので重いのなんの。パズルのように試行錯誤を繰り返す。
人毛マットもセットしてみて、どうにかカタチになった。
油圧ユニットをめぐる歓喜とショック 重大問題発生! 8月下旬
機器の動作確認も終わり、8月末には施設が概ね完成することが見えてきたので、9月第一週に初めから終わりまで油の試し搾りを計画し、豆腐屋の臨時休業を急遽決定して告知。
最大の問題は、平出さんがどの程度の圧力をかけていたかを正確に新しい油圧ユニットに設定しなくてはならない。平出油屋で使用していた油圧計は非常に古いもので平出さんも単位がわからず、平出さんからは2000から2500の間で使うと習った。はっきりしないので、新しい油圧ユニットには平出さんの古い油圧計もつけてもらうことにした。
下の写真はユニットの全体で下の油圧計が新しいもの、上の方の油圧計が平出油屋のもの。油圧ユニットを動かすと下の油圧計(単位MPa : メガパスカル)の針は動いていくが、上の古いものはほとんど動かない。しばらく使っていなかったので、中の油が固まってしまったのか。比べて単位を算出するという作戦は失敗。

別の方法で、単位をちゃんと割り出さなくてはいけない。
平出さんを通じて知り合った、千葉の今井製油(廃業)の元工場長Hさんに電話で聞いてみた。平出油屋と同じ玉締め機でゴマ油を長年搾っていた。使用していた油圧計の単位はkgf/㎠。ゴマの場合ではあるが、150~170kgf/㎠で搾っていたという。
下が平出さん平出油屋の油圧計。

調べてみると、圧力の単位としてはKgf/㎠(キログラム重毎平方センチ)、MPa(メガパスカル)、mb(ミリバール)、PSI(重量ポンド毎平方インチ)などがある。
しかし今一度平出油屋の油圧計を確認しても、それらの単位らしきものは見当たらない。いくつか文字列があり、上から、
HYDRAULIC GAUGE(液体圧力計)
?LANCHARD.M.F.G.CO(最後がcoなのでカンパニーで会社名と思われる)、
OSAKAと丸いマーク(会社のマークか?)
いずれも単位とは関係なさそう。
最後はいきなり飾り文字から始まるので文字すらはっきりしない。
bb.pr.a” か?
単位の可能性はこれしかないが、この暗号みたいなものは何?輸入物のような古い油圧計なので、単位は「重量ポンド毎平方インチ」ではないかと仮定し検討してみることにした。
調べてみるとイギリスでは、ポンドを重さの単位と貨幣の単位のどちらにも使うので、区別するために重さの方は英語でlibra poundというらしい。そこから略称はLbを使うという。最初のbbらしき文字は飾りのついたLbと読めなくもないがはっきりしない。
行き詰まって、近くの温泉の湯舟につかりながら、現代ではPSI=pound square inch、と考えていると、ふと思いついた。squareとは四角形の意味もある。「a」じゃなくて「□」の四角形なのではないか?もし、そのあとの「”」にインチの意味があれば「square inch」になる。急いで風呂場を出て、スマホで「インチ記号」を調べてみると、何とすぐに「”」が出てきた。インチの略号に使うらしい。「□”」はsquare inchだ!
あと残るのは途中の「pr」。重量ポンド毎平方インチを英語で調べるとpound per square inch。だとすればperを略してpr.と考えれば、Lb.pr.□”は 重量ポンド毎平方インチの意味になる。歓喜した。ついにやった、暗号解読に成功!
次は、平出さんの言う2500がどれぐらいの圧力になるかを計算してみた。2500PSIを換算するとおよそ17MPa。
今井製油の元工場長Hさんから教えてもらったゴマの150~170kgf/㎠をMPaに計算してみると、15MPa~17MPaになる。間違いない!
ところが、導入済みの油圧ユニットの最高出力は7MPa 。平出油屋の油圧計の単位がわからないまま、いろいろな情報をもとにこれで足りるだろうと導入したものだ。全然足りない。暗号解読の歓喜から一転、奈落の底に突き落とされた。このユニットは使えない。急遽業者さんとも相談し、17Mpaを出せる油圧ユニットを探してもらい、改めて発注した。お金もかかるが納期も早くて一か月先。試し搾りはそれまでできない。搾油のスケジュールが遅れてしまう。
大変なショックを引きずりながら、豆腐屋は臨時休業に突入。新しい油圧ユニットが来れば搾れる、と気を取り直して、それぞれの機器でできるチェックをしてみたり、残っていた作業をすることにした。
焙煎テスト 9/1(月)
焙煎機の回転羽根も動くようになったので、うまく焙煎できるかテスト。最後の搾油ができないため、ナタネを使うともったいないので、大豆を焙煎してみる。要するに煎り大豆を作ってみる感じ。以前、テストで薪を燃やしたが、今回はガンガンに燃やしてみる。

一晩うるかした(水につけた)大豆を焙煎してみた。
カリカリの煎り大豆にはならなかったが、薪の火力を調整すれば何とかなりそうだ。とはいうものの、ナタネでやってみるまではわからない。
ナタネを唐箕にかける 9/3(水)
活動報告で既報の通り、6月に会津美里町の八木沢菜の花会から本年度産のナタネを刈り取って譲り受けた。教えてもらった通り、すぐに天日干しをして乾燥は終わっていたが、ゴミを飛ばす唐箕(とうみ)がけという作業が残っていた。同会から電動唐箕も借りたままになっていたので、作業した。前日に屋外で試したところ風が強くてブルーシートもうまく敷けなかったため、屋内に変更。電動唐箕は初めてだったので、試行錯誤。25キロずつ袋に詰めて計量。菜の花会は今年は不作だったということで、例年の何分の1という5袋強の収穫量が確定した。わかってはいたが、あまりに少ない。
フルイのテスト 9/4(木)
本来は、ナタネを焙煎したら、すぐにフルイに入れ→昇降機→圧偏機→蒸し→搾りと工程が進んでいくのだが、搾りができないので、生のナタネを使って圧偏機のホッパー(受け)までナタネが送れるかをテストした。
無事、圧偏機の上まで送られた。袋に入ったナタネは回収。あとの工程のテストは、油圧ユニットを交換してからとなる。この報告を書いている時点では、まだ新しいユニットの納期の連絡はない。
2025/9/9記